彼が嘘をついた

「……………」

「遥が、大樹のことを好きでもいいよ。
…逆に、大樹を忘れるために俺を利用してくれたらいい。
俺も同じだから…」

「えっ…?」
思わず五十嵐くんを見つめる。

「…気付かなかった?
俺が真由子を好きだって…。
…俺は遥が大樹を好きだって、すぐに分かったけどな」
ちょっと照れたように言う五十嵐くん。

彼が真由子を好きだと言うのもビックリだし、私の恋心に気付かれていたのも恥ずかしい。

「お互い、カムフラージュになるからいいじゃない?
遥、俺と付き合って!」

改めて…とは違うけど、五十嵐くんに告白された。

告白されるのは初めてじゃない。
それまでされた告白には、全部『ごめんなさい』と断っていたけど、今回は、
「…よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。

だけど…
五十嵐くんを好きなわけじゃない。
でも…、多分…、こうするのがいいと思った。
もうヒロくんに想いが届かないのなら…
ヒロくんが信頼している五十嵐くんなら、好きになれるかも知れない。
…そう感じたから。

「あぁ、こちらこそよろしくな」
五十嵐くんは笑顔で答えたてくれた。
そして、
「カムフラージュでも、本当の恋人同士に見えるようにしないとな。
特に、大樹と真由子には絶対に怪しまれないようにしないと!
そのための簡単なルールを作ろう」
そう言った。


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