彼が嘘をついた
「……………」
「……………」
「…遥、ごめん。
顔を上げてくれる?」
五十嵐くんの優しい声に、ゆっくりと顔を上げ、彼を見つめた。
「…遥が俺を避けたのは、俺が悪いんだよね?
俺が…、2日も続けて、遥に断りもなしにキスしたから…」
五十嵐くんのその言葉に、また顔を伏せた。
…こんな態度じゃ、
(そうです!
あなたがキスしたから、私はあなたを避けたんです!)と白状したようなものなんだけど…
「…俺さ。
好きでもない人にキスするような、そんないい加減な男じゃないよ!」
「…えっ……?」
五十嵐くんの言葉に、思わず顔を上げ、また彼を見つめてしまった。
「遥のことが、好きなんだ」
私をまっすぐに見て、五十嵐くんが告白してくれた。
「…もう、付き合ってるフリはやめたい!
そして、ちゃんと遥と付き合いたい!
…ダメかな?」
「……………」
「……………」
「…はい。
…よろしく、お願いします!」
かなり間をあけて、私は答えた。
彼を見ると、優しく微笑んで、
「うん。こちらこそ、よろしくな」
そう言ってくれた。
「で。とりあえず。
次から俺のことは名前で呼んでな。
いつまでも"五十嵐くん"だと、距離を感じて、ちょっと寂しいから…」