彼が嘘をついた
そんな風に言われたら、
「…善処します…」
と答えるしかない。

「うん。
そろそろ陸に着くから、降りる準備をしよう」

そう言われて周りを見ると、ほとんどが席を立って外に出ている。
まだ何人かは残っているけど…
(ちょっと待って!
こんな中で告白されていたなんて恥ずかしい!)

そんな私の気持ちが分かったように、
「…大丈夫だよ。
みんな、自分たちの話に夢中で、誰も俺たちのことなんか気にしてないから…。
さぁ、行くよ」

そう言って、手を差し出すから、私も自然に、その手を繋いだ。

そのまま船から降りるときも、手を繋いだままでエスコートしてくれた。
嬉しい…けど、ちょっと恥ずかしい!

「さて、どうする?
車で、湖の周りをドライブして帰るか?
確か反対側に、上手い洋食屋があったから、そこでご飯を食べるか?」

駐車場まで歩きながら、これからを話し合う。
彼が言う"洋食屋"は、私も行ったことがあるから分かる。
店名を"フライパン"と言って、ハンバーグやポークソテーが美味しいお店だ。

彼が車のキーを開けてくれて、私は助手席に乗り込む。

「ごめん、ちょっとだけ待ってて」

彼はそう言って、スマホを持って車から離れた。
そして、どこかに電話をかけている。


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