彼が嘘をついた
「そういうことだから!
誘っておいて悪いけど、あんまりこの部屋に長居しない方がいいよ」
平然とそんなことを言う彼。

キスの余韻から正気に戻りつつある私は、彼の言葉を理解して、ハッと自分の身体を隠すように抱きしめた。

そんな私を見て、
「…ごめんごめん、嘘だよ。
ちゃんと遥のペースに合わせるよ。
それは約束する!
でもな…。
…あんまり俺を煽らないでくれ。これでも、我慢するの大変なんだから」

「えっ…?
あっ…、うん。ごめんなさい。
じゃあ、帰るね。
おやすみなさい」

私はそう言うと、彼の部屋を出て、すぐ隣の自分の部屋へと戻った。
そして、着替えを持つとバスルームに駆け込んでシャワーを浴びる。

さっきのキスでほてった身体は、まだ熱を持っている。

(どうしよう…。
私、本気で恋しちゃったみたい。
ドキドキが、なかなか止まらない!)

そうしてその日は、嬉しい楽しい気持ちのまま眠りについた。

前に友達が言っていた
『好きな人がいるだけで、毎日ハッピーだけど、相手も自分を好きになってくれるなんて、ホントに奇跡だよね。
それだけで、幸せなことだよね』
と言う意味が、今やっと分かった気がした。





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