オトナチック
杉下くんがケガをしたことは誰にも言っていなかった。

会社の方も彼がケガをしたことには気づいていたけれど、それに対して誰も問いつめる人はいなかった。

なのに、どうして新一は杉下くんがケガをしたことを知っていたのだろう?

そのうえ、ケガをした場所も知っている。

「――全部、あなたがやったことだったのね…」

震えている声でそう言った私に、
「さあな」

新一はバカにするように笑った後、その場から立ち去った。

彼の後ろ姿が見えなくなっても、私はその場から動くことができなかった。

やっぱり、全部新一の仕業だったんだ…!

「――高浜?」

その声に視線を向けると、心配そうな顔をした杉下くんが目の前にいた。

「こんなとこで何してるんだ?」

そう聞いてきた杉下くんに、
「何でもない。

ちょっと、ぼんやりとしてただけだから」

私は首を横に振って答えると、早足でコンビニへと向かった。
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