オトナチック
「お先に失礼します」

「はい、お疲れ様でした」

いつものように仕事を終わらせると、オフィスを後にした。

出て行く私を杉下くんが視線を向けたけど、それに気づかないフリをして逃げるように立ち去った。

早足で家に帰ると、荷物をまとめてすぐに出て行った。

ホテルにチェックインをして部屋に入ると、カバンからスマートフォンを取り出した。

新一のアドレスは削除したけれど、着信履歴には彼の電話番号が表示されていた。

私は深呼吸をすると、画面に表示されている新一の電話番号を指でタップした。

「もしもし?」

すぐに出た新一の声に、
「私よ、芽衣子」

私は答えた。
< 106 / 326 >

この作品をシェア

pagetop