オトナチック
「だから、言いがかりはやめろって…」

「私は“彼”だと言ったわ。

一言も名前なんか出していなかったはずよ?

会社のことだって、一言も話したことなんてなかったはずよ?」

「――ッ…」

新一が悔しそうな顔をしたのがわかった。

「あなたの望み通り、私は彼から離れた。

だけど、あなたとは絶対にヨリを戻さないわ。

好きな人ができたからって言う理由で家を追い出されて、その好きな人に振られたからヨリを戻したい――話がおかしいにも程があるわ」

「黙れ!

お前は高校の時からつきあってきた俺を裏切るって言うのか!?」

強い口調で怒鳴ってきた新一に、
「好きな人ができたって言って裏切ったのはあなたの方でしょう?」

冷たい口調で、私は言い返した。
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