オトナチック
黒髪ボブの髪は相変わらずである。

顔立ちは美人と言われたこともなければ、ブサイクとも言われたこともない。

だけど、我ながら特徴がないなと自分でも思う。

「どうでもいいか」

鏡の中の自分に向かってそう呟いた後、かごの中に先ほど部屋から持ってきた私物を置いた。

服を脱ぐと、ガチャッとバスルームのドアを開けた。

躰と髪を洗った後、湯船に躰を浸からせた。

ちゃぷん…と言う水音が狭いバスルームに響いた。

「――杉下くんが好き、か…」

呟いたその言葉は、湯気がこもっているバスルームの中へと消えて行った。

時間が経ったら何かの間違いじゃないかと言うことで、この気持ちは消えるのではないかと少しだけ期待をしていた。
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