オトナチック
杉下くんに引っ張られている手が痛い。

「杉下くん、離して」

家の中に入ったところで、私は杉下くんに言った。

「えっ、ああ…」

杉下くんは気づいたと言うような顔をすると、私の手を離してくれた。

「杉下くん、どうしたの?

顔が何だか悪いよ?」

そう言った私に、
「悪かったな…」

杉下くんは呟くように謝った。

「えっ?」

何が“悪かった”の?

「今日はもう疲れただろ?

夕飯は俺が作るから、高浜は先に風呂でも入っててくれ」

「えっ、ちょっと…」

私から逃げるように、杉下くんはキッチンの方へと足を向かわせた。
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