オトナチック
「切った後で病院の方からかと思ったけど、知らない電話番号だったから無視したんだ。

それで今振り返ったら、声がよく似ていたなって思った。

だけど、何のために…」

杉下くんは訳がわからないと言う顔をした。

「杉下くん。

“寺本”って言う名字なんだけど、もしかして…」

仮説を確かめるために聞いた私に、
「ああ、そうだよ」

杉下くんは答えた。

「“寺本”は俺の前の名前――要は、離婚した俺の父親の名前だよ」

「やっぱり…」

私の仮説は正しかった。

「でも、何で?」

そう聞いてきた杉下くんに、
「その名前を聞いた時、すごく動揺をしていたから」

私は答えた。
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