オトナチック
杉下くんは目を伏せると、
「今さら、何しにきたんだろうな」
と、呟くように言った。

「私もわからない」

私は首を横に振った。

また私たちの間に沈黙が流れた。

先に沈黙を破ったのは、
「高浜」

杉下くんからだった。

私は杉下くんに視線を向けた。

杉下くんは立ちあがると、
「戻ろう」

私に手を差し出してきた。

その手をつかむと、私は立ちあがった。

「――あっ…」

思わぬことに気づいて、私は小さな声で呟いた。

「どうかしたのか?」

杉下くんが聞いてきたけど、
「何でもない…」

私は首を横に振った。
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