オトナチック
「していないわよ。

やることはちゃんとやるから」

そう言った私に、
「うまく演じてくれよ」

杉下くんが言った。

「じゃあ、この話は終わりだな」

コホンと咳払いをして話を切りあげた杉下くんに、
「短い間かも知れないけれど、お世話になります」

私は頭を下げた。

「こちらこそ、よろしく」

私のまねをするように、杉下くんも頭を下げた。

杉下くんは自分を育ててくれたおばあさんのために、私は住むところを提供してくれた彼への恩を返すために、偽りの婚約関係を結んだ。
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