オトナチック
杉下くんはそう言っているけれど、私が彼を殴ることができる自信はないに等しかった。

でも、
「わかってるよ」

私は首を縦に振ってうなずいた。

「じゃあ…」

杉下くんは深呼吸をすると、病院の中に足を踏み入れた。

私はそんな彼の後を追うように、病院の中に入った。

受付で集中治療室の場所を聞くと、私たちはそこへと足を向かわせた。

集中治療室に入ろうとしたら、
「杉下さん、ですか?」

声をかけられたので視線を向けたら、寺本さんがいた。

「はい、そうです」

杉下くんは返事をすると、
「あの、先日はとんだご無礼を…」

寺本さんに謝った。

「父のお見舞いにきたのですが…」

そう言った杉下くんに、
「ああ、こちらです」

寺本さんは案内をしてくれた。
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