オトナチック
私たちは寺本さんの後を追うように、集中治療室に足を踏み入れた。

「ここです」

シャッと寺本さんが仕切っていたカーテンを開けると、ベッドに1人の男性が横たわっていた。

この人が杉下くんのお父さんなんだと、私は思った。

ベッドの横に置いてある心電図が規則正しく動いていた。

「年齢とったな」

久しぶりに見たお父さんの顔に、杉下くんはそう呟いた。

「まあ、20年以上も会っていなかったらそうなるか…」

続けてそう呟いた後、杉下くんはお父さんが横たわっているベッドへ歩み寄った。

「父さん」

杉下くんはお父さんに声をかけた。

「こうして会うのは20年ぶりだけど、俺が誰だかわかりますか?

あなたの息子の和泉です」

その瞬間、お父さんのまゆ毛がピクリと小さく動いたような気がした。
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