オトナチック
「あなたが脳梗塞で倒れたと聞いて名古屋までやってきました。

本当のところを言うと、俺は今でもあなたのことを恨んでいます。

あなたが俺を捨てて出て行ったあの日のことを今でも覚えています」

私はお父さんの顔から杉下くんの顔へと視線を向けた。

眼鏡越しのその瞳は悲しそうだった。

だけど、彼がお父さんを見つめるその瞳には愛おしさもこめられているような気がした。

「あなたがいなくなって寂しかった。

あなたからいろいろなことを教えて欲しかった。

あなたともっと遊びたかった」

杉下くんの声は震えていた。

「俺がどれだけあなたのことを嫌っていても、どれだけあなたのことを恨んでいても、本当にあなたのことを嫌いになることはできなかった」
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