オトナチック
集中治療室から出ると、杉下くんは壁にもたれかかった。

「杉下くん、大丈夫?」

顔を覗き込んで声をかけた私に、
「ずっと溜めてたことをぶつけたから、ちょっと疲れた…」

杉下くんは笑った。

「正直なことを言うと、ぶつけたかったことの半分は伝わったかどうかは怪しいけれど」

呟くようにそう言った杉下くんに、
「お父さんに伝わったと思うよ。

杉下くんがぶつけたかったこと全部、お父さんに伝わったと私は思うよ」

私は言った。

「ありがとう、高浜。

やっぱり、高浜がついてきてくれてよかった」

杉下くんは私にそう言った後、笑いかけた。

言われた私は目を伏せた。

まだ告白の返事は聞いていないけれど…もう、このままでいいのかも知れない。

杉下くんは私のことを信用している――これだけでもう、私は充分だ。
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