オトナチック
杉下くんが定期入れに指を入れると、中から紙が取り出された。

「――ッ…!」

それを見た瞬間、杉下くんは隠すように手で口をおおった。

どうしたのだろうか?

そう思いながら杉下くんの手元を覗き込んで見ると、
「これって…?」

定期入れから出てきたのは、1枚の写真だった。

写真に写っていたのは、小さな赤ん坊だった。

杉下くんが写真の裏を見た。

『8月20日誕生 命名、和泉』

写真の裏にはそう書いてあった。

「――ッ…!」

それを見た瞬間、杉下くんの目から涙がこぼれ落ちた。

「――父さん…」

写真と定期入れを大切そうに胸に抱えると、杉下くんはその場に座り込んだ。
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