オトナチック
「ありがとう」

杉下くんは私にハンカチを返すと、ゆっくりと立ちあがった。

私も彼にあわせるように立ちあがる。

「ありがとうございました」

そう言った後、杉下くんは寺本さんに頭を下げた。

私も彼に倣うように頭を下げた。

「父に会えてよかったです。

できれば直接話をしたかったのですが、それは父の意識が戻ってからの楽しみにします」

そう言った杉下くんに、
「主人もあなたと会うことができて、喜んでいると思います」

寺本さんは微笑んだ。

「もし父の意識が戻ったら、連絡をしてもらえませんか?

また会いにきます」

杉下くんが言った。

「わかりました。

主人にもそう伝えておきます」

寺本さんは私たちに頭を下げた。
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