オトナチック
「お待たせしましたー」

店員が先ほど頼んだメニューをテーブルのうえに置いた。

「じゃ、スープ持ってくる。

高浜もいるか?」

そう聞いてきた杉下くんに、
「じゃあ、お願いしようかな」

私は答えた。

杉下くんは椅子から立ちあがると、スープを取りにドリンクバーの方へと足を向かわせた。

その後ろ姿を見送ると、
「仕方ないよね…。

私は付き添いで、杉下くんと一緒にきただけなんだから…」

誰にも聞かれないように、小さな声で呟いた。

それでも嬉しかった。

それでも楽しかった。

また一緒に行くことができたらいいなって思ってた。

でも…私と杉下くんの関係は、形だけの婚約者だ。
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