オトナチック
たったそれだけのことなのに、動揺を隠すことができなかった。

「高浜?」

椅子に座った杉下くんが私に声をかけてきた。

「あ…ありがとう、杉下くん」

お礼を言った私に杉下くんは嬉しそうに笑うと、フォークをパスタに巻きつけた。

私はスプーンを手に取ると、コーンスープをすすった。

少しだけ塩コショウが効いているのは、私の気のせいだと思いたかった。

「そう言えばさ、おみやげ買うんだろ?」

杉下くんが思い出したように聞いてきたので、
「誰に?」

私は聞き返した。

「誰にって、会社にだよ。

家族旅行に行くからって言って有給を申請してきたんだろ?」

そう言った杉下くんに、
「ああ、そうだったね。

すっかり忘れてた」

私は言い返した。
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