オトナチック
震えている肩に手を伸ばそうとしたけど、すぐに手を引っ込めた。

そっとすることにしてあげようと思い、私は静かにリビングから立ち去った。

自室から下着とパジャマとバスタオルを手に持って出てくると、その足でバスルームへと向かった。

「杉下くん、大丈夫かな…」

そう呟いた声は、バスルームの壁に反響した。

ようやくお父さんに会うことができて、お父さんに今までの思いをぶつけることができた。

お父さんの意識が戻ったら直接話ができることを楽しみにしていた。

なのに、お父さんがたった今亡くなったことを知らされた。

お父さんに会えたのに…。

お父さんと話ができると思っていたのに…。

バスルームから出ると、リビングに顔を出した。
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