オトナチック
「杉下くん…?」

ソファーにいるはずの杉下くんはそこにいなかった。

「杉下くん!?」

大きな声で名前を呼んだ私に、
「風呂か?」

ガチャッと音がして視線を向けると、杉下くんが自室から出てきていた。

何だ、部屋にいたのか…。

よからぬことを考えてしまった自分に呆れて、私は息を吐いた。

「な、何をしていたの?」

そう聞いた私に、
「名古屋に行く準備をしてた」

杉下くんが答えた。

「えっ?」

そう聞き返した私に、
「父さんの葬式に出るから。

さっき、寺本さんにもそう連絡した」

杉下くんは言った。

「そう…」

呟くように返事をした私に、
「会社に連絡して、朝1番の新幹線で行くから」

杉下くんは宣言をするように言った。
< 267 / 326 >

この作品をシェア

pagetop