オトナチック
いつものように仕事を終わらせて家に帰ってきたけれど、そこに杉下くんはいなかった。

当たり前だ。

杉下くんは今、名古屋にいるのだから。

「今日は寒いからラーメンにしよう」

インスタントラーメンの残りがまだあったはずだと思いながら、私はキッチンへと足を向かわせた。

棚からみそ味のインスタントラーメンを取り出すと、冷蔵庫にある野菜の確認をした。

「にんじん、キャベツ、たまねぎ、後は豚肉…と」

杉下くんが料理をする時にいつも身につけているエプロンを装着すると、夕飯作りに取りかかった。

作ったばかりのラーメンをテーブルのうえに置くと、スマートフォンを手に取った。

「きていないか…」

杉下くんからの着信はきていなかった。
< 271 / 326 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop