オトナチック
テレビではクイズ番組が映っていたけれど、問題の答えよりも杉下くんからの着信が気になった。

いろいろと忙しいんだから、杉下くんから連絡がくる訳がないっつーの。

神経をクイズ番組に集中させようとしたけれど、やっぱり気になるのは杉下くんのことだ。

「んもー!」

これじゃあ、何のためにスマートフォンを自室に置いてきたのかわからない。

「杉下くん、何しているんだろう…?」

まだ準備で忙しいのだろうか?

ちゃんとご飯を食べているのだろうか?

そんなことを思っている私は、
「お母さんじゃないのよ…」

まるでお母さんみたいだと、私は思った。

自分のことくらい自分でやっているって言うのに。

だから、1人で名古屋へ行ったって言うのに。

「強制でもいいから、私も名古屋に行けばよかったな…」

そうしたら、こんなにも杉下くんのことを考えなくて済んだのかも知れない。
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