オトナチック
病室を後にした私たちは、待合室のソファーに座っていた。

「高浜」

私の名前を呼んだ杉下くんの目は泣き過ぎたせいで、赤く充血していた。

「何?」

そう聞き返した私の声も同じく泣き過ぎたせいで、鼻声だった。

「ありがとう」

お礼を言われた理由がわからなくて、私は首を傾げた。

「一緒についてきてくれてありがとう」

そう言った杉下くんに、
「うん」

一言だけ返事をした。

「父さんの次は、ばあちゃんが亡くなるとは…な」

杉下くんは震えた声で呟くように言った後、自嘲気味に笑った。

「おばあさんのお葬式、今度は私も手伝うよ。

ううん、手伝わせて」

そう言った私に、
「いろいろ大変だと思うけど、高浜と一緒なら何とかなりそうだ」

杉下くんは笑った。
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