オトナチック
私たちが病院を出たのは明け方だった。

「また朝になったな」

水色に染まっている東の空を見ながら、杉下くんが言った。

今日もまた新しい朝がくる。

私たちは始発の電車に乗るために、駅へと向かって歩いていた。

「家についたら会社に連絡して、少しだけ仮眠をとるか」

そう言った杉下くんに、
「そうだね」

私は首を縦に振ってうなずいた。

駅へと向かって歩いている私たちの間には距離があった。

その距離を縮めるために手を繋ごうとも思わなければ、近づくこともできなかった。

結局、返事を聞きそびれちゃったな…。

状況が落ち着いたら、その時に聞いてみよう。

そう自分に言い聞かせていたら、駅が見えてきていた。
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