オトナチック
葬儀会場を後にすると、杉下くんと一緒に電車に乗った。

「ねえ、どこに行くの?」

杉下くんにそう聞いたけど、
「ついて行けばわかるよ」

彼はそう答えただけだった。

電車を降りて、歩くこと10分。

「ここだよ」

ついたのは、1軒の小さな平家だった。

縁側と庭がついていて、外観は古いけど、温かみのある家だった。

表札に視線を向けると、“杉下”と書いてあった。

「えっ、ここって…!?」

表札を見て驚いた私に、
「ばあちゃんの家だよ。

大学を卒業するまでは俺も暮らしてた」

杉下くんが言った。

ズボンのポケットから鍵を取り出すと、それをドアノブに入れた。
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