オトナチック
「俺も出て行って、ばあちゃんも亡くなったけど…正直なことを言うと、まだこの家を取り壊したくないんだ。

だから、会社からは少し遠くなるけどここに住もうかなって思って」

「そうなんだ…」

だとしたら、早いうちに今住んでいるところを出た方がいいのかも知れない。

杉下くんがこの家に住むと言うならば、その方がいいのだろう。

「だけど、1人で住むには広過ぎるんだ」

そう言った後、杉下くんは私を見つめた。

「高浜…いや、芽衣子」

杉下くんが私の名前を呼んだ。

「えっ…」

名字じゃなくて、どうして名前なの?

私のことを名前で呼ぶのは、おばあさんの前だけでしょう?

突然名前で呼んだ彼がわからなくて、私は戸惑った。
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