オトナチック
杉下くんの気持ちに気づいた時、彼と結ばれたいと思っていた。

結ばれて、彼の本当の婚約者になりたいと思っていた。

でも私たちの関係は形だけの婚約者だから、それはかなわないと思っていた。

だけど、その思いがかなう時がきたんだ。

今まで夢に見ていた杉下くんの本当の婚約者になる時がきたんだ。

そう思ったら、私の目から涙がこぼれ落ちた。

「め、芽衣子…?」

突然泣き出した私を、杉下くんが戸惑ったように名前を呼んだ。

でも私が今流しているこの涙は、嬉し涙なんだよ。

杉下くんの本当の婚約者になれるから、嬉しくて泣いているんだよ。

「――本当に、私でいいの…?」

そう言った私の声は、かっこ悪いくらいに震えていた。
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