オトナチック
夢を見ているのではないかと思った。

私の都合のいい夢なのではないかと思った。

「芽衣子だからいいんだよ」

杉下くんはそう言った後、親指で優しく涙をぬぐってくれた。

「芽衣子だからそばにいたいんだよ。

芽衣子のことを好きになったから、好きだから、そばにいたいんだよ」

私を見つめている眼鏡越しの瞳は潤んでいた。

「芽衣子じゃないとダメなんだよ…」

呟くようにそう言った杉下くんに、
「私も杉下くん――和泉じゃないとダメだよ…。

和泉が好きだから、そばにいたい…」

私は言い返した。

「芽衣子が作った炒飯を毎日食いたい」

「何よそれ…」

「だって、芽衣子が作る炒飯は美味いんだもん」

私たちは笑いあった。
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