オトナチック
その声の主に視線を向けると、
「――杉下くん…?」

紺色のダウンジャケットを着た、背の高い男が目の前にいた。

スタイリッシュな眼鏡越しの瞳が私を見下ろしている。

彼は杉下和泉(スギシタイズミ)くん、私の同期だ。

私の隣のデスクに座って一緒に働いているけれど、無口な性格なのか彼とはあまり話したことはなかった。

そのうえ無愛想なのか、彼が笑っているところも見たことがなかった。

眼鏡越しの瞳から逃げるように、私はうつむいた。

どうしよう…。

こんなところで会社の人と会うとは思わなかった…。

そう思った時、ギシッと音がして私の隣に杉下くんが座ったのがわかった。

私は隣に視線を向けた。
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