オトナチック
「旅行に行くのか?」

杉下くんが聞いてきた。

彼がそう聞いてきたと言うことは、荷物を見たからだと思った。

そりゃ、そうだよね。

ボストンバックにキャリーバックが足元にあったら、誰だってそう聞くよね。

「そんな訳ないじゃない…」

私は首を横に振った。

「理由を聞いたら長くなりそうか?」

その言葉の意味がよくわからなくて、
「えっ?」

私は聞き返した。

杉下くんはベンチから腰をあげると、
「ここじゃ寒い」

そう言って、私の方に視線を向けた。
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