オトナチック
時間は夕方と言うこともあり、電車の窓からオレンジ色の光が差し込んできていた。

それを座ってぼんやりと見つめていたら、
「――すまなかったな」

私の横から声が聞こえた。

その声に答えるように、私はドアにもたれかかるように立っている杉下くんに視線を向けた。

「ばあちゃんがそんなことを言うとは、正直予想をしていなかったよ」

困ったように呟いた杉下くんに、
「でも、ちゃんと答えられていたでしょう?」

私は言い返した。

「まあな。

結構演技が上手なんだなって思ったよ」

杉下くんは眼鏡越しの瞳を細めると、フッと笑った。

そんな風に笑うことができるなら、会社でも笑えばいいのに。

彼の笑った顔を見ながら、私はそんなことを思った。
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