ほとんどパラダイス
他のファンとは明らかに違う、なれなれしい態度と媚びた笑顔。
服装も如何にも派手でキラキラしてる。
ブランド物のバッグも、高いピンヒールも、とってもお似合いな美人さん。
会話の内容までは聞こえないけれど、明らかに彼女は上総(かずさ)んの知り合いなのだろう。
元彼女……なのかな。
三々五々散ったはずのファンの子達もめっちゃ2人を見てる。
「しつこい女。」
ファンの子達のつぶやきが聞こえてきた。
……てことは、以前から、ファンの子達の間では知られた存在?
上総んは、何とか手を放してもらおうとしてるけれど、けっこうな長時間つかまってた。
やっと上総んが女を振り切ったのを確認してから、私はゆるゆる歩き出した。
何となく、ココで上総んと合流するのは、他のファンの子に失礼なような気がした。
角を曲がって立ってると、程なく上総んが来た。
「元カノ?」
「……ごめん。変なとこ見せた。」
否定しないのか。
そうか……。
今まで、あーゆータイプと付き合ってたのか。
まあ、そうだよな。
派手な世界だもんな。
「とりあえず、行こう。」
そう言って、地下への階段を降りた。
たくさんの紙袋を何とか左手だけで持って、上総んは右手を私に伸ばした。
手をつなぐ。
それだけの行為なのに、罪悪感を覚えた。
「見られるよ。」
そう言ったけど、上総んは私の手を、より強く握った。
胸が……痛んだ。
「ところで、何でスーツ着てるの?用事あった?」
上総んは、行きつけの割烹に連れてってくれた。
食事もそこそこに、ひれ酒を楽しみながらそう聞く。
「だって、学美がスーツで出かけたから。俺がカジュアルだと合わないかな~、って思って。」
……私に合わせたのか。
何てゆーか……照れくさいかも。
「ほら、もっと食べて。これから寒くなるのに、学美の皮下脂肪じゃ冬を越せないよ。」
上総んはそんなことを言って、自分のつまんでいた肉じゃがや、ぶり大根を私の前に置いた。
「……無理。これだけでいい。」
蒸したあん肝と奈良漬をつまみに、ひれ酒。
これなら、けっこういけそう。
「そういや、さっきのお姉さんはナイスバディだったわね。抱き心地がいいって、あーゆー感じなんでしょうね。」
しみじみとそう言うと、上総んはちょっと困った顔をした。
「学美ちゃん、その話はもう……」
「内緒?あ、そう。」
話す気がないなら、いい。
私は上総んに背中を見せて、ひれ酒をあおった。
「あー、もう!ごめんって。内緒とかそんなんじゃないから。……彼女は、元カノというよりは……セフレ?」
「はあっ!?」
思わず、カウンターを叩いて、勢いよく上総んのほうに向き直り、睨んだ。
「何!それ!信じらんない!最低ー!!!」
「いや、もちろん、もう切れてるから!学美と付き合ってから、遊びも浮気もゼロ。ほんとだよ。」
上総んはそんな風に言ったけど……そもそも、私と付き合い始めたのっていつ?
ほんの2、3ケ月ってとこじゃないの?
……絶対まだ向こうは、切れたとは思ってないだろ。
「他にもいるんでしようね。お相手。」
上総んは否定できないらしく、苦々しい笑顔を見せた。
服装も如何にも派手でキラキラしてる。
ブランド物のバッグも、高いピンヒールも、とってもお似合いな美人さん。
会話の内容までは聞こえないけれど、明らかに彼女は上総(かずさ)んの知り合いなのだろう。
元彼女……なのかな。
三々五々散ったはずのファンの子達もめっちゃ2人を見てる。
「しつこい女。」
ファンの子達のつぶやきが聞こえてきた。
……てことは、以前から、ファンの子達の間では知られた存在?
上総んは、何とか手を放してもらおうとしてるけれど、けっこうな長時間つかまってた。
やっと上総んが女を振り切ったのを確認してから、私はゆるゆる歩き出した。
何となく、ココで上総んと合流するのは、他のファンの子に失礼なような気がした。
角を曲がって立ってると、程なく上総んが来た。
「元カノ?」
「……ごめん。変なとこ見せた。」
否定しないのか。
そうか……。
今まで、あーゆータイプと付き合ってたのか。
まあ、そうだよな。
派手な世界だもんな。
「とりあえず、行こう。」
そう言って、地下への階段を降りた。
たくさんの紙袋を何とか左手だけで持って、上総んは右手を私に伸ばした。
手をつなぐ。
それだけの行為なのに、罪悪感を覚えた。
「見られるよ。」
そう言ったけど、上総んは私の手を、より強く握った。
胸が……痛んだ。
「ところで、何でスーツ着てるの?用事あった?」
上総んは、行きつけの割烹に連れてってくれた。
食事もそこそこに、ひれ酒を楽しみながらそう聞く。
「だって、学美がスーツで出かけたから。俺がカジュアルだと合わないかな~、って思って。」
……私に合わせたのか。
何てゆーか……照れくさいかも。
「ほら、もっと食べて。これから寒くなるのに、学美の皮下脂肪じゃ冬を越せないよ。」
上総んはそんなことを言って、自分のつまんでいた肉じゃがや、ぶり大根を私の前に置いた。
「……無理。これだけでいい。」
蒸したあん肝と奈良漬をつまみに、ひれ酒。
これなら、けっこういけそう。
「そういや、さっきのお姉さんはナイスバディだったわね。抱き心地がいいって、あーゆー感じなんでしょうね。」
しみじみとそう言うと、上総んはちょっと困った顔をした。
「学美ちゃん、その話はもう……」
「内緒?あ、そう。」
話す気がないなら、いい。
私は上総んに背中を見せて、ひれ酒をあおった。
「あー、もう!ごめんって。内緒とかそんなんじゃないから。……彼女は、元カノというよりは……セフレ?」
「はあっ!?」
思わず、カウンターを叩いて、勢いよく上総んのほうに向き直り、睨んだ。
「何!それ!信じらんない!最低ー!!!」
「いや、もちろん、もう切れてるから!学美と付き合ってから、遊びも浮気もゼロ。ほんとだよ。」
上総んはそんな風に言ったけど……そもそも、私と付き合い始めたのっていつ?
ほんの2、3ケ月ってとこじゃないの?
……絶対まだ向こうは、切れたとは思ってないだろ。
「他にもいるんでしようね。お相手。」
上総んは否定できないらしく、苦々しい笑顔を見せた。