ほとんどパラダイス
「ちょっ!」
思わず、手に持った荷物を上総んにぶつけた。
「何やってんのよ!このドスケベ!」
「いてて。……はは、『ド』がついた。」
「喜ぶな!」
私は、ドンドンと上総んに荷物をぶつけて、ついでに足も軽く踏んだ。
「わかったわかった。……でも涙の別れよりいいだろ。」
「はあ?阿呆ちゃう!?」
そう吐き捨てたけど、上総んの目が惜別で潤んでることに気づいた。
私はちょっと反省して、荷物を足元に置くと、両手を上総んの首にまわして抱きついた。
上総んの手が私の背中に回り、ぎゅっと力を込めて抱きしめられた。
「……ほんっと、細すぎ。折ってしまいそう。……心配だから、お願いだから、もうちょっと食べて。酒ばっかり飲んでないで。」
「やだ!それじゃ、私、アル中みたいやん!普段は飲まないのに。」
ちょっとむくれたけど、上総んの体温や、細いけど筋肉質の身体が心地よくて……頬をすりつけた。
「何か、遠距離恋愛の恋人たち、みたい。」
考えなしにそう言ってしまった。
「……違うの?」
上総んが、不満そうにそう聞いた。
「あ、そうなの?……ふ~ん。そうなんだ。」
別に意地悪してるつもりはなかったんだけど、何となく「遠距離恋愛」も「恋人」も他人事みたいで、私はそんな風に返した。
……たぶん、照れくさいのもあったと思う。
でも上総んはちょっとショックだったらしい。
「ほんっとに……学美は、いつになったら、俺に惚れてくれるんだろう。」
ため息まじりにそう言った上総んがかわいくてかわいくて……。
私は上総んの頬にそっと唇を押し付けてから、荷物を持って新幹線に飛び乗った。
「とっくに惚れてる。」
ドアが閉まってからそうつぶやいたけど……通じたかしら。
ま、いいや。
逢えない時間はすごーく長く感じたのに、待ちに待った12月はあっという間に過ぎてしまった。
特に後半、上総(かずさ)んは来月のお稽古に入ったので、あまり邪魔できない。
そもそも、今回は上総んだけじゃなく、師匠もぼっちゃんも一緒。
師匠の入りから出までのお世話もあるし、お付き合いも増えたようだ。
まあ、私も卒論の提出もあったし……結局、期待したほどは一緒に過ごせなかった。
ただ、クリスマスプレゼントとして渡されたルビーの指輪は、とてつもなくイイモノで驚いた。
なんと、上総んのお父さん、つまり12代目が上総んのお母さんにプレゼントしたものを、現在のデザインにリフォームしたらしい。
……怖くて値段が聞けないけど、何となく、意味がありそう……指輪だけに……。
「こんな高価そうなもの、いいの?」
「いいよ。てか、学美に持っててほしい。」
「……持ってるだけで、実際につけにくいけど。ここまで大きいルビー。」
「そうだよな。首輪がわりにネックレスにしようかとも思ったんだけど、意味がスルーされちゃいそうだから。」
意味!
やっぱりそういう意味があるのか!
……まあ、ファッションリングにしては上等過ぎるよな、うん。
私が指輪をじーっと見て固まってしまったので、上総んはちょっと笑って、ケースごと指輪を取り上げた。
そして、おもむろに指輪をつまんだ。
思わず、手に持った荷物を上総んにぶつけた。
「何やってんのよ!このドスケベ!」
「いてて。……はは、『ド』がついた。」
「喜ぶな!」
私は、ドンドンと上総んに荷物をぶつけて、ついでに足も軽く踏んだ。
「わかったわかった。……でも涙の別れよりいいだろ。」
「はあ?阿呆ちゃう!?」
そう吐き捨てたけど、上総んの目が惜別で潤んでることに気づいた。
私はちょっと反省して、荷物を足元に置くと、両手を上総んの首にまわして抱きついた。
上総んの手が私の背中に回り、ぎゅっと力を込めて抱きしめられた。
「……ほんっと、細すぎ。折ってしまいそう。……心配だから、お願いだから、もうちょっと食べて。酒ばっかり飲んでないで。」
「やだ!それじゃ、私、アル中みたいやん!普段は飲まないのに。」
ちょっとむくれたけど、上総んの体温や、細いけど筋肉質の身体が心地よくて……頬をすりつけた。
「何か、遠距離恋愛の恋人たち、みたい。」
考えなしにそう言ってしまった。
「……違うの?」
上総んが、不満そうにそう聞いた。
「あ、そうなの?……ふ~ん。そうなんだ。」
別に意地悪してるつもりはなかったんだけど、何となく「遠距離恋愛」も「恋人」も他人事みたいで、私はそんな風に返した。
……たぶん、照れくさいのもあったと思う。
でも上総んはちょっとショックだったらしい。
「ほんっとに……学美は、いつになったら、俺に惚れてくれるんだろう。」
ため息まじりにそう言った上総んがかわいくてかわいくて……。
私は上総んの頬にそっと唇を押し付けてから、荷物を持って新幹線に飛び乗った。
「とっくに惚れてる。」
ドアが閉まってからそうつぶやいたけど……通じたかしら。
ま、いいや。
逢えない時間はすごーく長く感じたのに、待ちに待った12月はあっという間に過ぎてしまった。
特に後半、上総(かずさ)んは来月のお稽古に入ったので、あまり邪魔できない。
そもそも、今回は上総んだけじゃなく、師匠もぼっちゃんも一緒。
師匠の入りから出までのお世話もあるし、お付き合いも増えたようだ。
まあ、私も卒論の提出もあったし……結局、期待したほどは一緒に過ごせなかった。
ただ、クリスマスプレゼントとして渡されたルビーの指輪は、とてつもなくイイモノで驚いた。
なんと、上総んのお父さん、つまり12代目が上総んのお母さんにプレゼントしたものを、現在のデザインにリフォームしたらしい。
……怖くて値段が聞けないけど、何となく、意味がありそう……指輪だけに……。
「こんな高価そうなもの、いいの?」
「いいよ。てか、学美に持っててほしい。」
「……持ってるだけで、実際につけにくいけど。ここまで大きいルビー。」
「そうだよな。首輪がわりにネックレスにしようかとも思ったんだけど、意味がスルーされちゃいそうだから。」
意味!
やっぱりそういう意味があるのか!
……まあ、ファッションリングにしては上等過ぎるよな、うん。
私が指輪をじーっと見て固まってしまったので、上総んはちょっと笑って、ケースごと指輪を取り上げた。
そして、おもむろに指輪をつまんだ。