蜜味ヴァンパイア~薔薇の花園~
血と薔薇と運命の出逢い

#1

私は、家の近くにある、ビニールハウスに向かっていた。

そこは今、綺麗な薔薇の花が咲き誇っているのだ。

私の『お気に入りの場所』だった。

いつもは、綺麗な薔薇を見て、終わるはずだった。

だけど、今日は違っていた。

私は、まさか、あんな『先客』がいるとは、思いもしなかったのだ。


私が、自称・『バラ園』と呼んでいる場所に、入ろうとした時、私は息を呑んだ。

男の人‥‥‥、それも、横顔を見ても分かる。

見惚れるほど、美しい容貌をしていた。

金色に光る髪に、深いブルーの瞳。

だが、そんな目立つ外見とは裏腹に、黒いコートを着ていた。

だが、男の人は、一人ではなかった。

綺麗な女の人が、親しそうに傍らに寄り添っていたのだ。

その瞬間、胸がズキリッと傷んだ。

あれっ!?

この『胸の傷み』は、なっ、何だろう?

私は、わけが分からない『思い』のまま、二人の様子を見ていた。

男の人は、女の人とひとしきり、熱い口づけを交わしていく。

ズキンッ!!ズキンッ!!ズキンッ!!ズキンッ!!

また、あの『胸の傷み』だ。

さっきより、酷くなってる。

私、どこか悪いのだろうか?

その時だった。

男の人が、女の人の首筋に唇を這わせたと思ったら、その『口』からは『牙』が‥‥‥‥‥。

そう。

紛れもなく、『牙』を出し、女の人の血を吸っていた。

「‥‥ひっ‥‥‥‥!!」

私は、あまりの恐ろしさに、小さな悲鳴をあげた。

そして、その場にへなへなと座り込む。

その男の人は、『ヴァンパイア』だった。

だが、ヴァンパイアが血を吸っている、恍惚な表情は、一生忘れられないだろう。

私は、相手がヴァンパイアだと知りながらも、その美しさに見惚れてしまっていた。

女の人はぐったりとしていて、ヴァンパイアは、ゆっくりと地面に横にさせた。

そして、ヴァンパイアは、ゆっくりと私のほうを向いた。

私とヴァンパイアは、目が合った。

どっ、どうしよう!?

ヴァンパイアに見つかってしまった。

でも、その瞬間、私の胸がドキンッ!!と高鳴るのを感じていた。

どうして!?

相手はヴァンパイアなのに、私は、こんなにドキドキしてるんだろう?

私は、恐怖ではない、胸の高鳴りをしていた。

すると、

ヴァンパイアが、いつの間にか、私の目の前に立っていた。

私は、ただただ、その『美しい顔』を見上げているだけ。

ヴァンパイアは、私をジッと見つめていた。

そして、一言、こう言った。

「お前、『ハーフ・ヴァンパイア』だな?」

と‥‥‥‥‥。

私は、わけが分からず、その場に座りこんで、ヴァンパイアを見つめ返したのだった。




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