翠花火



『ねえ、修平』


全部を言い切った俺の手を握り返して、
紗季は言った。


『翠花火、綺麗だよ』


紗季の言葉に、
俺は顔を上げて空を見た。


緑色がいっぱいに広がる。


音もなく、大きく打ちあがる。



これはきっと、見ている人は他にはいない。





これが、翠花火。



これが、噂の翠花火・・・。





『ああ、綺麗だな』




『・・・修平と見れて良かった』



『俺で良かったの?』



『修平と一緒が良かったの!』





ほら、また可愛く俺を誘うんだ。





『なあ、紗季』


『なに?』


『すっげえ今さらだけどさ、誕生日、おめでとう』


『・・・覚えてたの?』


『ああ・・・まぁ・・・』



茜に気付かされたなんて死んでも言えない。


嬉しそうに笑う紗季が、
とても愛おしく、とても綺麗に見えた。



真っ白な生地に朝顔模様の紗季の浴衣が、
花火の色に魅せられて緑が映る。



そんな翡翠の色を纏った彼女は妖艶で。



『ねえ修平。この花火が上がってるときにね、
 願いごとをすると夢が叶うんだって。

 何か一つ、お願いごとしようよ』



紗季がそう言って、打ちあがる花火を見上げた。



『ああ。そうだな』



『一つだからね?いい?』



『わかってるよ』




紗季と一緒に目を閉じて、願いを込める。


紗季は何を願ったんだろう。


俺の願い?


俺の願いは・・・―





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