翠花火
〈なあ、ラック〉
〈何?修平〉
〈翠花火って言うのはさ、
翡翠の色をした花火だからそんな名前らしいよ〉
〈翡翠、か。幸せを運ぶ象徴の色だね〉
〈幸せ、ね〉
重い扉が、再び錆び付いた音を響かせて開かれた。
白い生地に、朝顔模様が緑に染まる。
秋の夜長、空に広がる翠花火。
〈俺の願い、叶ったよ〉
どうか、来年もあの子と一緒に。
〈誕生日おめでとう。紗季〉
空を見上げて静かに笑う横顔が、
とても可憐で、愛おしくて。
今年も願いごとをしよう。
あの日と変わらない、願いごとを。
来年も、あの子と一緒に。翠花火を―。
END