翠花火



暗がりの中を、茜と2人。


俺は茜をまっすぐに見つめた。



『茜が紗季を好きだなんて知らなかった。
 いきなり打ち明けるもんだから信じられなくてさ、
 何て言ったらいいのか・・・俺・・・』



『あー、言っておくけどそれは嘘』


『は?』


『可愛いなーとは思うけど、
 俺は紗季ちゃんに恋愛感情はないよ』



ぽかんとする俺と、
ニヤニヤと嫌な顔を見せる茜。



あれは全部・・・嘘?



あんだけ本気って言っておいて、嘘だったのか!?



『お前・・・なんでそんな嘘・・・っ!!』



『嘘だって分かったら修平は紗季ちゃんのとこに行かないのか?』



茜が怒ったように言った。



『俺はさ、いつまでもうじうじしてるお前の背中を押してやっただけ。
 だからさっさと好きだって言ってこいよ、アホ』



『茜・・・・』



『ああ、そう言えば知ってるか?
 翠花火が打ちあがった時に告白すれば成就するって。


 そうじゃなくても、
 その時に願いごとをすればその願いは叶うんだぞ』


『お前詳しいね。そんなの信じるやつだっけ?』



『俺はわりとロマンチストなんでね。
 ちなみに紗季ちゃんにこのこと教えてあげたのは俺だしね』




茜はふふん、と自慢げにそう言った。


そうしてふっと一つ息をつくと笑った。



『行ってこい。早くしないと間に合わねぇぞ』


『・・・おう』



パン、と手を打ち合わせて、
俺はその場を後にした。





『走れ!修平!』



背中に親友の声を受けて、
向かうは紗季の待つ屋上。



翠花火が上がるまで、あと30分。





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