身分違いの恋
身分違いの恋。
◆
「カーティス様、では私はこれで失礼いたします」
「ああ、おやすみ。フィービー」
私は書斎で書き物をしていらっしゃる、主人のカーティス様にひとつお辞儀をすると、背を向けた。
「あ、フィービー」
「はい、なんでございましょう」
何かを思い出した主人、カーティス様の呼び声に振り返ると、彼はにっこりと微笑み、「今夜は、うんと冷えるらしいから、きちんと扉を閉めて眠りなさい」とそう言った。
「……はい」
まだ他に何かご用があるのかと思い、続きの言葉を待っていても、それきりカーティス様の薄い唇は開く気配はない。どうやら私の用事は本当に済んだらしい。
「失礼いたします」
私はもう一度、カーティス様に深く一礼すると、書斎のドアを閉めた。
書斎から出るタイミングが遅れたのは、カーティス様のお言葉が、私の意図していたこととは違う内容だったからだ。
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