身分違いの恋

 もしも彼らが紳士であるならば、女性の体にはみだりに触れたりはしないはずだもの。



 私は掴まれた腕を弾いた。


 カーティス様以外に触れてほしくない。

 お願いだから、放っておいてちょうだい。


 一度は弾いたはずの手は、けれどまた伸びてきて、今度はさっきよりもずっと強い力で掴まれた。


「離して!!」

 身を捩り、拒絶するも、手は振りほどけない。


「威勢がいいな」


 男性はにたりと薄気味悪い笑みを浮かべ、嫌がる私を見下ろしている。

 そうして私ははじめて彼らの容姿に目が入った。

 男性二人の肌はどこか浅黒く、仕草といい雰囲気といい、とても陰気くさい。


 彼らが笑うと、歯はところどころ抜け落ちていて、隙間を作っているのが見えた。


 それが気持ち悪さに拍車をかける。

 だけど拒絶する私とは裏腹に、体はひと目につかない大木の下までずるずると引きずられていく……。


< 10 / 20 >

この作品をシェア

pagetop