身分違いの恋
いったい私を助けてくださった方はどなただろう。
知っている声だと思ったのは間違いで、きっと見知らぬ紳士に違いない。
なにせ私が聞き間違えた方は、私の事を追い出したくてたまらないと思っているはずだから……。
私は期待に胸を膨らませないよう、そう自分に言い聞かせ、私を抱き留めてくださるあたたかな腕の主を見上げた。
そして目を疑った。
だってそこには、深海を思わせるエメラルドの瞳があったから……。
ああ、カーティス様。
なぜカーティス様がいらっしゃるのだろう。
会えて嬉しいと思う反面、自分は彼に捨てられた身だ。
ここで思わぬ再会を果たしたとしても、惨めになるだけだった。
「ああ、フィービー! 叔母上からまだフィービーが屋敷に着いていないという連絡を受けて探しに来たのだが……無事で何よりだ」
「……助けていただき、ありがとうございました」
私は怖かったと泣きつきたくなる弱虫な自分を奮い立たせ、込み上げてくる涙を仕舞うと力強いあたたかな腕から抜け出した。