身分違いの恋
けれど彼は私を見逃してはくださらなかった。
「フィービー? いったい何処へ行くつもりだ?」
私の腕を掴み、ふたたびカーティス様の前まで引っ張られた。
あたたかな体温が冷え切った私の体をあたためる。
けれどだめ。このあたたかな空間に身を任せてはいけない。
だって私は彼に不必要な人間ですもの。
どこへ行くかですって?
そんなの決まっているわ。
カーティス様ご自身がお命じになられた叔母様の屋敷に行くのよ!!
ああ、けれど約束の刻限をとっくに過ぎてしまった。
規則の厳しい叔母様だ。刻限を破ってしまった今、伺いを立てることもできない。
「できるならどこか遠くへ。私を雇ってくださるところへ行きます」
いっそのこと、さっきの人さらいを追いかけて、私を買ってくれる人を探してもらおうかしら。
安易で愚かな考えが頭を過ぎる。