身分違いの恋

 けれど彼は私を見逃してはくださらなかった。


「フィービー? いったい何処へ行くつもりだ?」


 私の腕を掴み、ふたたびカーティス様の前まで引っ張られた。

 あたたかな体温が冷え切った私の体をあたためる。


 けれどだめ。このあたたかな空間に身を任せてはいけない。

 だって私は彼に不必要な人間ですもの。



 どこへ行くかですって?

 そんなの決まっているわ。

 カーティス様ご自身がお命じになられた叔母様の屋敷に行くのよ!!



 ああ、けれど約束の刻限をとっくに過ぎてしまった。

 規則の厳しい叔母様だ。刻限を破ってしまった今、伺いを立てることもできない。


「できるならどこか遠くへ。私を雇ってくださるところへ行きます」


 いっそのこと、さっきの人さらいを追いかけて、私を買ってくれる人を探してもらおうかしら。


 安易で愚かな考えが頭を過ぎる。


< 14 / 20 >

この作品をシェア

pagetop