身分違いの恋
 ◆◆



「っひ……」


 その日、私は泣き声を噛み殺しながら、長年仕えてきた屋敷から離れるための身支度をした。




 明くる日。

 叔母様のお屋敷には自分ひとりで向かうとそう言って、従者を寄越してくれるという叔母様のせっかくのご厚意をお断りした。

 それならばと、お優しいカーティス様は私が困らないよう、従者をつける手筈を整えていただいた。


 でも、私はシードルフ家を追い出された身。

 カーティス様のお気持ちを受け取ることはできない。



 私はひとりで向かうとそう言って、太陽が青空の真上にある時刻にカーティス様のお屋敷を出た。

 今はとにかく、ひとりになりたかった。

 誰にも邪魔されない、ひとりで打ちひしがれる時間がほしかった。





 いったい、どれくらい歩いただろうか。

 私は好きな人から追い出されたという絶望からとうとう立ち止まり、道ばたでうずくまってしまった。


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