幸せのかけら
"……今回だけだからな。
でも俺にどうしろって……"
"とりあえず、話聞かせてくれ。
おーーい!!!
響が彼女の話してくれるってよ。
何か質問ある人ー??"
……勘弁してくれ。
なんでこいつらに話さないといけないんだ。
やっぱりやめようと考えてると、匠が新しいビールを持ってきた。
"少し酔った方が話しやすいだろ?"
"匠……"
"怒るなって。
あいつ、最近フラれて傷心中なんだよ。
俺も最近話聞いてなかったし、たまにはいいだろ?"
味方は誰ひとりいねぇのかよ。
匠も面白がってるようにしか見えないし、もうこの際どうでもいいか。
ぐっとビールを流しこみ、覚悟を決めた。
"ほんとに今回だけだからな!"
"よっ男前!!"
"はーい、質問!!"
俺さー、付き合い始めてから金の減り方がすごいんだけど、デート代は響が出してんの?"
"俺らの場合は…割り勘だけど。
つーか、愛がそうしてくれって"
意外と真面目な質問に拍子抜けしたが、とりあえずこっちも真面目に答える。
"響が出したりしねぇの?"
"誕生日祝いとかなら出すけど、最初出そうとしたら
男だから奢るっていう訳分かんないプライドならやめて、お互い学生なんだから
って言われてさ"
"響の彼女強いな……次!!
デートはいつもどんな感じで決めてんの?
行く場所尽きねぇ?"
"イベントとかあるし尽きないだろ。
場所は愛が決めることが多いな。
俺もたまに決めるけど、ごはん専門だな"
"ごはん専門?"
"肉フェス行きたいとか。
あと、お互い好きなバンドのliveとか"
"肉フェス一緒に行ってくれんの?"
"ああ、なんで?"
"すげー。
なんかそういうガッツリ系は彼氏の前で食べづらいとかいうじゃん"
"あー、そういうのはないな。
ハンバーガーも大きな口あけて普通に食べてるし"
口元にソースつけながら、おいしいって喜んでる姿はかわいいなと思う。
"あとはー………"
"もういいだろ?"
"まだ2つだ!"
"こんなん人それぞれだって。
これ以上聞いても参考になんねーよ"
"じゃあ路線変える!!
彼女のどこが好き??"
……やっぱ、最後はこうなるよな。
まぁ、覚悟してた、してたんだけど。
キラキラした目でこっちを見てくるのを避けるために手元に向けると、指輪が視界に入った。