幸せのかけら
















"ーーーーーーーーーダメですよ、先輩。
それ、俺仕様なんであんまり甘くないんです"




カシャンとフェンスを掴む音。

さっきまで試合してた響が目の前にいた。







"ーーー響、もしかして、例の彼女?"


"はい。
だからちょっかいかけないでくださいね"


"おいおい。
俺は奥さん一筋だから。
モテる響クンをみて帰ろうとしてたから、呼び止めたんだよ"


"…………は?"

"ち、違うよ!
場所を移動しようかなと思っただけ"







帰るつもりはなかったことをすぐ訂正する。


私の言葉にちょっとホッとしたよう。






"愛、食わして"

"え、今?"


"そう"




さっき差し出そうとしてたレモンをフェンスの網の隙間から、響の口へ運んだ。



"うまい。
やっぱりこのくらい酸っぱい方が疲れ取れるわ。
ちょっとそこで待ってて、すぐ行くから"









そう言って、同期に何やら声をかけにいった。


ーーーーーーさっきから女の子たちの視線が痛い。






"ーーーーーーほんと溺愛してるな"


"え?"



"いやいや、こっちの話。
そっか、キミが響の彼女だったか"






ーーー名前で読んでて、凄く仲が良さそう。

もしかしてーーーーーー





"……………人事の方ですか?
響が就職活動中に会ったっていう…"


"正解。
人事部の、橘といいます。
響から話は聞いてるみたいだね"










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