幸せのかけら






"ーーーーーー道、覚えた?"



初めて降りた土地。

何回か乗り換えて、これから響が暮らすところへやってきた。



"うん"

"覚えて。ひとりでも来れるように"






ーーーこれから、何回も、ここに来るんだ。

そう思いながら、景色を焼き付ける。






目の前には綺麗なマンション。


会社はここから自転車で20分くらいらしい。





"……家賃高そう"


"会社から家賃補助出るし、あまり妥協はしなかった。
セキュリティもしっかりしてるところが良いし"


"今のご時世、男の人も気をつけないと"


"ばか。
愛の心配してんだよ"





頭ポンポンされ、その優しさににやける。




"ーーー好き"

"はいはい"




オートロックの解除の仕方も教わり、ドキドキする。







"はい。どうぞ"


"……お邪魔します"



ふわっと、あの柔軟剤の匂いがした。








黒を基調とした家具。

所々に段ボールが散らばってる。





"……愛、何固まってんの?"



< 128 / 160 >

この作品をシェア

pagetop