幸せのかけら
ーーー明日休みなのもあり、ビールも会話も進む。
"山中さんとは順調?"
"まあ普通に。
仲良くやってる"
"響は2人のときじゃないと話してくれないからな"
"…………そういうお前は?"
ーーー匠の話ってあまり聞いたことない。
大学時代もよくつるむようになってから、彼女はいなかったように思う。
大人で優しい匠は人気あったが、いつも上手くかわして。
"ーーープロポーズした"
"ーーーーーーーーーは?"
"断れたけど"
"……ちょっと待て。
最初から話してくれ"
話がぶっ飛びすぎてる。
そこまで興味があるわけではないが、自分もだんだん結婚を意識しているから余計に聞きたい。
"ーーー俺さ、今まで好きになったのってひとりだけなんだよ"
ゆっくりウイスキーロックを近づけながら話す匠は、いつもより少し幼くみえた。
"ーーー隣に住んでる幼なじみ。
俺より5コ上。
年上に見えないくらい子どもっぽいときもあれば、急に凛とした女性になったり、自分でもおかしいと思うくらいその人だけにしか心が反応しないんだよ"
"付き合ってるのか?"
"いや、もう何十回も断られてる"
"……………プロポーズしたんじゃ?"
"もう大人だし、俺は手に入れた時点で婚姻届書く準備できてる。
いつも流されるから、俺がどれだけ本気か分かってもらおうと思って"
"ーーー匠って、熱い男だったんだな"