幸せのかけら





"ね、ほんとにお金受け取って"




"だーかーら、いらないって。
こっちが誘ったんだし"









さすがにずっといるのも申し訳ないので、みんなより先に帰ることにした。



河野くんが駅まで送ってくれることに。






"でも、奢ってもらうのは申し訳ない"



"じゃあ、響からもらうからいいよ"






なかなか譲らない河野くん。



……あまりしつこいと、嫌われるかな。






"ありがとう。ご馳走さま"



"そうそう。その言葉でじゅうぶん"






ニッコリ笑う河野くんに、その笑顔がみれて得した気分になる。








"山中さん。
俺、少し響の気持ちもわかるんだ"



"え?"





河野くんは何か言いたいのか、私の歩くスピードよりゆっくりになった。


私も、河野くんのペースに合わせる。







"多分、山中さんを傷つけたかったわけじゃない。
きっと、自分の無力さを痛感しただけじゃないかなと。

俺も時々ある。
とにかくひとりになりたいと思ったり"




"……河野くんも?"





"……大切だからこそ、時々
どうしたらいいのか分からないんだ。

大切なら大切なほど、ね"





"河野くん、もうちょっと分かりやすく"




"…………それだけ、響にとって山中さんは大切だってこと!
あとは、響に聞きなよ"







河野くんのしてくれた話は、私にはちょっと難しかった。


けど、あまりの真剣な雰囲気に、私は何も言えなくて、あっという間に駅に着いた。






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