幸せのかけら





"……はい、どうぞ"




駅近くの公園に移動し、響が買ってきてくれたホットミルクティーを受けとる。


私の好きな飲み物。
分かってくれてることに、嬉しくなる。






"21時すぎたな。
帰りちゃんと送るから"


"うん"






隣のベンチに座るけど、微妙に空いた空間。

会いたかったくせに、なんて切り出したらいいのか分からず、手元のミルクティーに目線がいく。









"愛"



"ん?"



"この間は……会いにきてくれたのに、ごめん。
俺の話、聞いてほしい"



"……うん"







やっと、聞けるんだ。

私も、ちゃんと向き合わないと。

響の方に目線を向けると、バチっと目が合った。






"愛のこと、凄いなって思ってるんだ"



"え……"




"研究にしても、勉強にしても……嫌だって弱味みせたり、文句いっても、なんだかんだ、ちゃんとやりこなして結果を出してる。
もちろん、それは愛の努力の結果なんだけど、俺には愛がキラキラしてみえた。

俺も負けてられないって刺激を受けてた。

けど、時々……自分がちっぽけに思う時もあった"






……胸が詰まって、なんて言えばいいのか分からなかった。

響がそんな風に思ってたなんて知らなかった。





"……愛の内定が決まって、焦らなかったって言ったら嘘になる。

けど、どこも最終面接で落ちて……自分が情けなくて。

愛にどう伝えたらいいか分からなくて、一番やってはいけないことをした。

傷つけたかったわけじゃない。

余計な心配かけたくなかったし、ただ回りを見る余裕がなかった"






連絡が取れない間、研究や勉強で気を紛らしても、響のことが気になってた。

響も、苦しんでたのかもしれない。






"……愛といる時は、いつも自然体でいられて、それが心地よかった。

けど、嘘ついて、情けなくて苦しくて。

だんだん愛と一緒にいることができなくなっていった"






< 59 / 160 >

この作品をシェア

pagetop